「金継ぎ」とは。

 

欠けたり割れたりしたうつわを漆で繕っています。
欠けや割れを漆で繕い、金や銀で化粧することで、うつわに新しい「景色」が生まれます。
この修繕法は“金継ぎ”と呼ばれる漆の伝統技法。茶の湯に由来する、日本固有の美意識を込めた繕い法です。
最近は接着剤や樹脂、ニセうるしを使った方法もありますが、わたしは本物の漆を使用してお直ししています。
食べ物を入れたり口をつけて使うもの、普段使いのうつわだからこそ、身体に無理のないもので
繕いたいからです。

価値のあるもの。

 

もともとは茶道具や有名な骨董品など、高価なものに使われる技法でした。
しかし、値の張るものだから大切にする、というのはどこかもの悲しさを感じます。
値段や名に関係なく、どんなものにも「価値」があり、その人にとって大切にする理由があると思います。
その理由の多くが「友達からもらったもの」だったり「普段から使っている愛着のあるもの」だったり、暮らしに根ざした理由です。
そのためわたしは、あまりにも高価な骨董品や美術品のお直しは、お断りしております。

技術的なこともありますが、暮らしのうつわだからこそ直したいと考えているからです。

金継ぎは直す手段。

 

 

たまに「金継ぎしたいからうつわを割ろうかな」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

どうか、そのようなことはやめてください。

古いものでも新しいものでも、どんなうつわであれそのうつわを作る方は、それを作ってごはんを食べていらっしゃる方です。

命をかけて作っていらっしゃいます。

金継ぎはあくまで、うつわを直す手段です。

壊れて悲しいから直すのです。直すために壊すのは、本末転倒です。

金継ぎはしばしば「より芸術的になる」とか、「付加価値がつく」とか、「生まれ変わる」とよく言われます。

 

確かにそれも、金継ぎの一面の1つでしょう。

しかし、それはあくまで「結果」であって「目的」ではありません。

壊れて悲しいから直し、その結果美しく引き立てられるのだと、わたしは思います。

芸術性や付加価値を目的に壊し、直すのは本末転倒で、きっと真に美しくはないでしょう。

 

この世界は誰かの仕事でできています。

その仕事を故意に壊すことは、どうかやめてください。

ありがたいことに、わたしはうつわを直すことで生かしていただいております。

とはいえ、どんなものでも壊れないのが一番ですから、どうぞ大切にうつわとの暮らしを楽しんでいただいて、いざという時には金継ぎという手段を思い出していただけたら幸いです。

 うつわを引き立てる。

 

 

金継ぎは「新しい価値をつくる」のではなく「本来ある価値を引き立てる」ものだと思います。
値段などの目に見える価値に関係なく、金継ぎすることで、そのうつわの魅力を引き立ててくれるものだと
考えています。
「このシンプルな黒色が気に入っている」
という方には、黒が映えるよう、金仕上げで。
「このお皿の柄が好きだ」という方には、
柄の邪魔をしないよう、銀や漆仕上げで。
 
あなたのお気に入りがより映えるように、仕上げのご相談も承ります。お気軽にお問い合わせください。
詳しくはこちら→仕上げについて

お直しのこと。

 

 

「直してでも使いたい」と思えるものがあるのは幸せなことです。

また、そう思わせるものを作った方もきっと幸せです。

うつわを継ぐだけでなく、その想いもひっそりと継ぐことを大切にしています。

そのためわたしは、過度に装飾性を持たせることはおすすめしません。

もとはそのうつわを気に入って使っていたもの。その想いを汲み取って、お直しが主役にならないよう、

お直しいたします。

あなたの想いとうつわの作り手さんの想いを、ひっそりと、陰から支えるべく、いつでも同じように良い質で、雑念なく、淡々と、習慣的に仕事をするのが目標です。

まだまだ未熟者ですが、大切にお直しさせていただきます。

 漆について。

 

 

ウルシの木から採れる樹液のことを、主に漆と呼んでいます。
漆の主成分はウルシオールと呼ばれる成分で、これがある一定の温度と湿度のバランスにより硬化することで、
接着剤や塗料の役割を果たします。一般的に「漆が乾く」というのは硬化することです。
漆は普通の接着剤と違って、数時間では乾きません。
最低でも1日〜5日、場合によっては1ヶ月以上かけてゆっくりと硬化することで、普通の接着剤よりも強く、
丈夫になります。